世界中で人気のシングルボードコンピュータ「Raspberry Pi 」はIotの波に載って一気に広がっています。個人的には2013年頃にニュースで知って、興味が沸いて触ってみたいと思いました。しかし、実際に購入出来たのは、2014年のRaspberry Pi 2Bです。
その頃には当ブログのような先駆者達が人柱のように様々なプロジェクトやノウハウを公開し始めていました。日本語の情報も増えてきたため私も手を出しました。
2018年現在でも知人に「Raspberry Pi 」と伝えても「何のパイ?」は変わりません。かなり普及しているなーと思っていても、PCに疎いかITに疎い人は興味どころか知らないのですね。
人気のRaspberry Pi といえど万能ではありません。フルスペックマシンと同じことをすることは意味も無く、Raspberry Pi の利点を活かしてサブのサブくらいで使うのが丁度良いでしょう。
そこで、この記事ではザックリと具体例を交えて、Raspberry Pi の特徴を紹介してみようと思います。
小さな基板であるRaspberry Pi の特徴
そもそもパソコンはパーソナルコンピュータの略ですから、個人用の端末という意味です。そういう意味でRaspberry Pi はパソコンではなく、ただの基板です。英語ならボード。
現在ではシングルボードコンピュータ(SBC)で括られるジャンルになります。シングル・・・1枚で必要な性能を有する基板のことです。
このシングルボードの割にHDMIなどリッチなインターフェイスを搭載していて、実用的な速度で動作するのに、これまでのテスト用基板同様に比較的安価なところが人気の秘密です。
個人的にはHDMI端子を標準装備している点が、広まった最大の要因だと思っています。簡単に表示できるという外に向けられた手段が、ある時期から液晶テレビやモニターに必ず付いているHDMI端子だからです。
これが別途、専用モニターが必須であったり、Appleのような独自規格の端子ならば敷居がグッと高くなってしまいます。
主な特徴
Raspberry Pi の特徴をザックリと挙げてみます。
- 安価(これまでの性能と比較して)
- 専用のOS「Raspbian」がある
- 安定した保守的なLinuxの種類であるDebianの派生(※個人的な印象です)
- 習得が比較的に容易で分かり易いプログラム言語「Python」で制御できる
- 構成がシンプルでPCのスケールダウンのようにも扱える
- 出来ることが豊富遊び(ゲーム)
- 実験(Lチカ、センサー類活用)
- 学習(プログラミング、ネットを使う)
- 実用的(生活に役立てられる、製品版と同等の事が可能)
- 本格的(製品化もアリ)
具体的にできること
実際にどうなのかを具体的に挙げてみます。
以前にも似たような記事がよく読まれました。皆さん、興味はあるようですね。
専用機能として
Raspberry Pi 自身が安価であるため、専用の機器に仕立てても無理がありません。少なくても製品化された商品よりも自由度が高く希望が叶います。
メディアサーバー
昔、メディアサーバーと言えば専用のハードウェアが人気でした。LinkTheaterなんて懐かしい。現在は「BUFFALO おもいでばこ」は家族写真のスライドショーには最適で人気です。
このような製品がRaspberry Pi で構築できます。
- 動画、写真、音楽をテレビで視聴
- LibreELEC
- OSMC
- Kodi
- 音楽再生、配信サーバー
- Volumio2
- 文書や様々なデータの共有
- NASサーバー
動画のみならず、データを共有して表示することで個人のPCで楽しむこと以外が可能です。
専用のOSを使う場合が多く、使い勝手や設定方法こそ違いますが、製品化された品と同等かそれ以上の機能を有します。
イチから構築する必要がないため、個人の利用であれば非常に簡単です。
スマートホーム
玄関の鍵をスマホで開閉するといった仕組み=システムを組むための中心としてRaspberry Pi を活用することができます。
既に玄関の鍵程度ならば、Raspberry Pi は必要無く単体で動作する製品が販売されています。スマートロックというジャンルです。
照明を制御することもRaspberry Pi で可能です。対応する照明機器は別途必要となりますが、それをボタンなりPCなり、スマホで制御するためにRaspberry Pi を使います。
お掃除ロボットを制御したり、モーターと連動して物理的にスイッチを押すように仕組んだり、室内の温度管理によってエアコンや扇風機の制御も比較的かんたんです。
屋内での生活を少し便利にさせるため、それらを制御する役割に制御コンピュータとして、省電力で安価な製品のRaspberry Pi は、自由にプログラミングできる点で優れています。
各種センサー類を付け足すことで、アイディア次第で何かに特化した専用機に仕立てられます。
定点観測・防犯カメラ
定点観測用や防犯カメラとしてRaspberry Pi にカメラモジュールを繋いで実現できます。
乳児、高齢者、ペットを見守る定点カメラなど、ただのカメラではなく操作や連絡ができるようなシステムも実用的です。
単純な防犯カメラとしても、各種センサーを繋げれば、目的に合ったカメラを構築可能です。
天体観測や植物の生長などを観察する際にも、低電力で小さい筐体が活かせます。
それらを自動制御させれば、指定時間で自動的にエサを与えたり、温度以上を知らせる警報やモーションセンサーなどによる感知にも使えます。
スマートスピーカー
音声をマウスやキーボードのように使うことで、これまでと同じようなことをさせようというものです。
これはインターネット環境が必須になります。
言語を理解するとまでは言わなくても、膨大なBIGデータを活用して、曖昧な表現や意味を理解したように動作させるには、1台のPCや基板では不可能です。
主にGoogle社の「Google Home」、Amazonの「AmazonEcho」、Appleの「HomePod」が有名です。
この仕組みをAPIというカタチで利用できるため、これに接続し利用することでRaspberry Pi でもスマートスピーカーを構築できます。(厳密にはGoogleやAlexaを召喚するイメージ)
Googleからはキットとして販売されています。
電子工作で学ぶ
Lチカが有名です。LEDをチカチカさせるから来ています。Raspberry Pi でLEDを光らせることから始まり、プログラミングで規定の動きを制御することで、実際に書いたプログラムコードを理解することができます。
非常に基本的なのに実際に光るという動きが、簡単に実現できるため初心者(特に小さな子)にはオススメです。
プログラミングでは初めての言語で”Hello, world!”を表示するコードを書きますよね? それと同じで先ずはLチカは基本になっています。
これは仕組みを勉強するという意味と、モニターの中のことが現実に影響が出ていることを、目の前にするため考え方などが印象に強く残るでしょう。成功の結果を見るには速くて確実です。
プログラミングってどうなっているのかよく分からないものですからね。
使う部材も少なくて済みます。
- ジャンパーワイヤー
- ブレッドボード
これにRaspberry Pi 本体一式でOKです!
このRaspberry Pi のGPIOにはモーターなどを繋げて簡易的なロボットのようにさせることも出来ますし、先のセンサー類を組み合わせれば、様々な切っ掛けを作り、あたかも自動的に(いや、自動だけど)判断して動作するように感じられます。
好奇心旺盛な子供なら、先ずは実体験できる電子工作はオススメです。1点ずつ買い揃えるのも分からないので、私はセットを買いました。
この部品を使ってサイトでも小さなプロジェクトをご紹介しています。
小さなパソコンとして使う
販売価格とは裏腹に意外と高機能なのがRaspberry Pi の特徴です。スケールダウンしたパソコンのように、基本の性能は充分あります。
CPU、画面表示のGPU、表示用のHDMI端子、メモリーも充分です。また、イーサネットポートで有線LANも繋げられ、Wi-Fiで無線通信できますよね。USBのキーボードとマウスを繋げれば立派なPCとなります。
デスクトップ環境
RaspbianはDebianの派生OSなので安定しています。しかもRaspberry Pi にカスタマイズされ調整されているので更に使いやすくなっています。
最近ではセットアップウィザードが充実しており、初めてのセットアップもマウスで次へと答えて行くだけで済み、インストールの簡単さだけならWindows10などに引けを取りません。

あまり動作が遅く(重く)なるような処理をさせなければ問題なく使えます。インターネットの閲覧、メールやTwitter、SNS、(あまり大きくない)写真の加工や動画の再生と編集、音楽を聴いたり、プログラムを書いたり、と基本的なことは行えます。
10インチくらいの小さなモニターとキーボードとマウスで、子供専用にしても良いでしょう。いや、大人でも充分なくらいです。
仕事で使う
仕事でも使えます。専用的に処理させるならば、自前のノートパソコンも必要ありませんし、何よりも単独で動作させれば、他のマシンと連携もさせられます。
簡易サイネージ
もしも中小企業や零細企業であれば、あまり大掛かりにサイネージは導入できません。かといって、味のある手書きPOPだけというのも手間が掛かりすぎます。
そこで、余っているモニターとRaspberry Pi を組み合わせ、オートで決まった画像をスライドショーで再生したり、単にメニューといった画像を表示させるだけでも使い勝手は良いハズです。
何よりも書き換えが容易です。それも業者さんに頼まなくても自由にレイアウトすることもでるでしょう。
専用のOSというとScreenlyOSEが有名です。
こちらはNOOBSにも収録されているので、簡単にトライできます。
簡易システム
自分だけのシステムを構築することも可能です。ある決まった処理を専用にやらせてみるのは面白いと思う。
仕事って現場によって要求が異なります。それもかなり異質になっていることが多いと思いませんか。それで自前のアプリみたいにExcelでゴリゴリ作っていた過去を思い出します。
そんなときにRaspberry Pi があったら、もっと色んな事が出来たのになーと懐かしんでいます。
勤怠管理の打刻機
これもNFCと連携して交通系ICカードや空のNFCカードで打刻させるのも可能です。取得したデータをどう扱うかというのは腕の見せ所です。これは現場によって変わるでしょう。このデータを元に短時間勤務者の給料を計算させるのは集計が楽になりますね。
これを人件費の予算と連携させて、日毎に自分の手元で表示させれば、予算達成率を確認できてシフト作りが楽になります。
※Raspberry Pi は時計は保っていませんから、別途でRTCモジュールの追加は必須です。
ドアの開閉確認
以前にネットで見かけたのは、トイレのドアを検知して他の家族が今トイレを使用しているか確認するという仕組みでした。面白い。
それよりも会社の会議室の利用状況が分かると助かることもあります。職種や現場によって必要な検知は変わります。Wi-Fi内でどこのドアの検知が必要か考えると楽しいです。
これも検知だけに留まらず、他のデータと連係したらより仕事を進めやすくなることでしょう。
自分だけのサーバー
会社では自前のPCなどを持ち込むのは厳しくなっています。と言っても零細企業だとまだまだそんなこともありません。商店のような規模や、10名くらいのスタッフ規模ならば、外注できるわけもありませんから、サクッと使いやすいサーバーがあると便利です。
よくあるのが、プリントサーバー。簡易的な文書管理・共有サーバー、シフト表を作成・閲覧するサーバーなど考えられます。
小規模の古い旅館や、昔ながらのビジネスホテルならば、パスポート専用のスキャナーなどもカメラモジュールを使えば出来そうです。筐体の製作の方が難しいくらいですね。
これ、外国では目の前でパスポートをスキャンすることで信頼されている現状があります。裏に持って行かれると不安ですしね。
個人的にどの現場でも必要だと思っているのが、部門毎に細分化された在庫管理をする機器です。きちんとした会社ならば、システム会社に頼めますし、そういう機能が入った統合パッケージも作ってくれます。しかし、高い。
簡易的な物でいいから、スマホでスキャンして取り込めたら楽なのになー。
JANコードが無い物は手元にバーコード一覧表なりで対処できます。紙とペンなんてやってられません。そういう現場は多いと思いますよ。
課題というか思うこと
いくら安いと言っても、世界で考えたらまだまだコンピューターは高いです。発展途上国ではRaspberry Pi の一式も大変でしょう。
日本人なら容易に購入できます。で、あるならば、もっとIot機器は導入した方がいいと思う。
ハングリー精神が無くなった日本は、こういった技術を軽視しているように思います。学んで技術を得ようとしている海外の人に勝てる訳がありまえん。
どこの国だか、USBメモリのネタで盛り上がっているようではね・・・。
そもそもUSBメモリを使っています? もう10年以上前に重宝した物です。しかも相手がデカいファイルを送れないからという程度であり、自分では使っていませんでしたね。
現実には未だにFAXを要求されると困惑します。
アメリカなどはFAXっていつの時代の物なのかという感じで、日本はまだまだFAX文化が抜けません。FAXは手書きには重宝しますけど、書類をオンラインで作成する時代に、そもそも紙に印刷する意味もなくなってきましたから。
まぁ、Raspberry Pi のような端末はドンドン使って欲しいけど、この国では全然先の話なんだろうーなーというのが悩ましいです。
最後に
厳密には、OSのRaspbianなどのアプリケーション開発、そもそものLinux界隈の事情、プログラム言語のPythonの人気や実績、イギリス本国のチカラの入れ具合、教育分野や途上国への普及、などなどリアルな一見して無関係な理由の方向性が、Raspberry Pi 財団によって良い意味でまとめられているような気がします。
流れというか、それだけ支持される理由があるのでしょう。
だから、同じように人気のオープンソースであるArduino(アルデュイーノ もしくは アルドゥイーノ)よりも知名度が上がったと感じています。
コミュニティの勝利?!
素人目にはArduinoもオープンソース、統合開発環境(IDE)、シールド(ラズパイのHATと同様)の存在、安価であって、教育分野でも有効な存在です。ひとつ違うのは元々が商用製品だった点があります。それでもArduinoは、ただなんとなく、かなりマニアックな存在と思っていました。
分からなくても検索したら答えが出てくる手軽さは、世界規模のコミュニティがあるからでしょう。
いずれにしても、Raspberry Pi は現在では容易に手に入る基板になっていますから、2020年の小学校プログラミングの必修化も含め、子供に触らせるには好都合な存在だと思っています。
簡潔に言うと、
- Raspberry Pi は安い
- 簡単
- 楽しい!
- オマケに教育にも最適!
ということで、この記事は4行でまとめられるというお話でした!
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