Raspbian Stretchが2018-11-13版にバージョンアップしました。今回の主な変更点と、イメージの種類の追加についてご紹介します。
これまでより、合理的で体系的な仕組みに向かっています。こういうところが同じシングルボードコンピュータのジャンルでRaspberry Pi が支持されている理由なんだと思います。
主な変更点
一番大きな変更は、ダウンロードイメージが3つに分けられたことです。

イメージは3種類に変更
今回から、基本のイメージはオプション(おすすめアプリケーション)が入っておらず、フルイメージは全てのオプション(おすすめアプリケーション)が入っています。
- Raspbian Stretch with Desktop And Recommended Software
- Raspbian Stretch With Desktop
- Raspbian Stretch Lite
この3つです。それぞれは簡単に書くと以下のようになりました。
Raspbian Stretch with Desktop And Recommended Software

何やら長い名前です。これまでのデスクトップ版(=フルインストール)にオススメのソフトウェアをごっそり入れたバージョンということです。
そのためこれまでのイメージは、それら一部のオススメされた大きなソフトウェアが入っていません。このバージョン(2018-11-13版)から、これがフルインストール版となります。
全部入り!で、デスクトップ環境をバリバリ使いたいならばこのイメージとなります。
2018-11-13-raspbian-stretch-full.zip(1.98GB)
Raspbian Stretch With Desktop

これまでのフルインストール版ですが、今回から大きなソフトウェアを除いてあります。これまでと比べると軽量版となります。ただ、必要なソフトウェアは揃っていますし、デスクトップ環境(GUI)がメインです。
通常はこちらをインストールすると良いでしょう。
2018-11-13-raspbian-stretch.zip(1.08GB)
Raspbian Stretch Lite

これは今までと変わらずデスクトップ環境がないイメージになります。(コマンドのみのCUI環境)
特にデスクトップ環境をマウスやキーボードで使う予定が無い機能を利用するのには、最軽量のこのイメージが適任です。恐らくこれまでと区別の変更はありません。
2018-11-13-raspbian-stretch-lite.zip(351.4MB)
他のイメージも更新していました
こんかいのバージョンアップに合わせて、他の3つもバージョンアップしています。
- NOOBS
- NOOBS LITE
- Raspberry Pi Desktop (for PC and Mac)
こちらも順番に試していきたいと思います。
バージョンアップで代表的な特徴
大まかに3点を細かく公式ブログで紹介されています。
- VLC Media Player
- Thonny 3
- デスクトップ環境設定
A NEW RASPBIAN UPDATE: MULTIMEDIA, PYTHON AND MORE
変更点の紹介3つ
1.VLC Media Player

RaspbianStretchのみならず、WindowsやMacOSX、LinuxでVLCメディアプレイヤーを使っている人は多いかも知れません。
このVLCはソフトウェアデコードが遅く、非力なマシンでは顕著に表れます。今回からVideoCoreのハードウェアデコードにアクセスさせることで快適に利用できるようです。
ハードウェアデコードは有料です。

ライセンスで管理され、ライセンスキーのみならず、Raspberry Pi の基盤とピアツーピアで管理されます。(基盤の番号登録が必要なので、他の基盤にそのまま使えません)
価格はMPEG-2が£2(274円)、VC-1が£1(137円)です。
(サイトの価格は税込です。イギリスの付加価値税が入っています。日本からの購入にはかかりません)
実際にはそのままではハードウェアアクセラレーションを有効に出来ませんから、今回のバージョンアップを機に、ライセンスを購入してみてはいかがでしょうか。
・・・私たちは今、Raspbianに完全にハードウェアアクセラレーションされたVLCバージョンが含まれていることを発表することができます。 ほとんどのオーディオファイル形式を再生します。 多くのビデオフォーマットにソフトウェアコーデックを使用し、VideoCoreのビデオエンジンを使用してH.264、MPEG-2、およびVC-1ビデオの再生を高速化します。 (MPEGとVC-1用に追加のコーデックライセンスを購入する必要がありますので、OMXPlayerとKodiでハードウェアアクセラレーションを有効にするライセンスを既に購入している場合は、このライセンスでVLC用のコーデックも有効になります)
2.Thonny 3

TonnyはユーザーフレンドリーなIDEです。先日リリースされたバージョン3は、ブレークポイントやPythonの構文チェッカーが逃したバグを見つけるためにコードを解析するアシスタント機能など、多くの便利な新しいデバッグ機能を提供しています。

以前にご紹介した「Muエディタ」よりも使いやすいと思います。プログラマーでも無いので、明確にお答えできませんが、より直感的に感じます。
3.デスクトップ環境設定

システムの根っこの部分の変更は一般ユーザーには馴染みも無く変化も気が付きにくい部分です。それにそこまで知る必要もないでしょう。
そういった変更はさて置き、デスクトップ環境の推奨環境が変更になったということで、その適用方法を知ってください。
これはイメージファイルからではなく、既に前バージョンが入っていた環境の人には有益です。
デスクトップ環境の設定(Appearance Settings)を起動し、[Defaults]タブにあるどれかのボタンを選択します。 すると、現在推奨されているデフォルトにデスクトップが設定されます。
自分で設定を変更している場合は、推奨されている設定に変更してしまいますので気をつけましょう。
もしも、新しいデスクトップ環境が気に入らなければ、キャンセルを押すだけで前の設定に戻ります。安心してください。
リリースノート
リリースノートは以下のようになっています。翻訳してまとめてみました!
2018-11-13:
2つのバージョンイメージが出来ました。基本のイメージはオプション(アプリケーション)が入っておらず、フルイメージは全てのオプショ(アプリケーション)が入ったパッケージです。
- 基本イメージから LibreOffice, Thonny, Scratch, Scratch 2, Sonic Pi, Minecraft, Python Games, SmartSim, SenseHAT Emulatorが削除されました。
- フルイメージにはオススメのアプリケーションであるMathematica, BlueJ, Greenfoot, Node-RED, Claws Mail, VNC Viewer、Python Games and SmartSimが追加されました。
- VLC media player with VideoCore ハードウェアアクセラレーションが含まれました。
- Thonny 3.0.5が追加
- LXDEコンポーネントの変更により、ローカル設定がグローバル設定を正しく上書きできるようになりました。
- 上記の設定変更をサポートする外観設定の変更
- 上記の設定変更をサポートするためのさまざまな初期設定デフォルトおよび関連パッケージの変更
- 外観設定のデフォルトオプションを選択すると、関連するローカル設定ファイルが削除されるようになりました。
- 外観の設定で行われたすべての変更が上書きファイルではなく、テーマファイルになるようにPixテーマは変更されました。
- スクロールバーボタンのデザインが変更されました。
- イメージビューアをメインメニューのグラフィックスカテゴリに移動しました。
- 推奨ソフトウェアは、必要に応じてLibreOffice言語サポートファイルをインストールし、必要に応じて再起動を提案します
- Pepper Flashプラグインの最新バージョンが含まれました。(※Pepper FlashプラグインはChromeのFlash Player)
- Chromium h264ifyのプラグイン権限がデフォルトで正しく設定されています。(※動画再生支援プラグインでChromium拡張機能ひとつ)
- 様々なMIMEタイプの訂正により、ファイルが分かりやすいデフォルトアプリケーションで開かれるようになりました。(※.txtとかファイルの種類のことです)
- デフォルトのタイムゾーンがヨーロッパ/ロンドンEuropeに設定された。
- Linux kernel 4.14.79
- Raspberry Pi firmware 12e0bf86e08d6067372bc0a45d7e8a10d3113210
アップデート方法
既に前バージョンが入っているRaspbianStretchをバージョンアップするには、イメージをダウンロードしなくても大丈夫です!
既に動いているデスクトップにターミナルを出して以下のコマンドだけでOK
このupdateというのはダウンロードする情報のある場所のアップデートという意味です。(リポジトリのアップデート)dist-upgradeとは?
distというはdistributionの略で、我々ユーザーがインストールしたり、利用できる形にまとめ上げたものを指します。Raspbianの場合はDebianと同じdeb形式で作られまとめられている仕組みのことです。
sudo apt-get update sudo apt-get dist-upgrade
コピーペーストしてエンターキーでアップデートが始まります。時間はかかります。再起動されて完了になります。
VLC media playerだけをアップデートしたいなら、通常のインストールと同じように、ターミナルでインストール指定すればOKです。
sudo apt-get update sudo apt-get install vlc
最後に
バージョンを重ねると使いやすくなるものの、ファイルサイズが巨大化していきます。これまでもUbuntuはそうでした。そのため、ハードウェアの高性能を要求されると、途端に古いマシンで使えなくなりました。
個人的にはそこでUbuntuは使うのを辞めたんです。2010年頃だったかなー。
だから、Raspbianは基本イメージだけは任意で追加できるカタチを残してもらい、古いRaspberry Pi のバージョンでも確実に新しい機能を享受できるようにしてもらいたいと思います。
最小限のイメージをダウンロードし、推奨ソフトウェアのすべてのオプションをチェックすると、完全なイメージになり、その逆もできる。
このようにパッケージ管理システムが同じDebian系のUbuntuに近くなりました。これはあまりLinuxに慣れていない人には大変分かり易いと思っています。視覚的に管理できるのはWindowsで慣れてきたからです。
ちょうど世界的にRaspberry Pi が盛り上がっているこの時期が分岐点になるような、そんなバージョンアップに感じます。
単に使いやすくなるのは大歓迎ですね!
2019年前半には日本でも技適が通ってRaspberry Pi 3A+が発売になります。このRaspberry Pi 3A+はインターフェイスこそ少なくなっていてもCPU周りなどは3B+と変わりません。これまで必要無いと思われる部分も利用してきた人は、より安価でパワフルな3A+をオススメします。
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