Raspberry Pi Imagerは、公式からリリースされているOSを書き込めるソフトウェアです。動作するイメージファイルを個別にダウンロードしても書き込めるため、汎用的にイメージファイルを書き込むツールとしても利用できます。
Raspberry Piで動作するOSの一部は、最初からメニューに登録されているため、公式のOSであるRaspberry Pi OSはもちろんのこと、わざわざ個別にダウンロードしないで済むのも便利です。
記事執筆時点(2022/2/4)では、ジャンル別に10種類ものOSを簡単に書き込むことが可能です。これはバージョンアップの度に増えている状態です。
この記事のRaspberry Pi Imagerはバージョンアップしたばかりでv1.7.1です。
その中で、簡易的なデジタルサイネージにも使えるようなFullPageOSをご紹介します。
基本はRaspberry Pi OS

Raspberry Pi Imagerは、Windows/macOS/Linux の環境で使用できます。もちろんRaspberry Pi OSにもインストール可能です。
恐らくWindows環境で使用する人が多いでしょう。
メニューの構成はjsonファイルで更新され、イメージファイルを選択するとOSのイメージファイルをダウンロードした後、指定したmicroSDカードへ書き込んでくれます。
番号を振ってみました。7〜9はツールとなりOSではありません。
1〜6がOSになります。ただ、すべてが無償ではなく、一部は試用版も入っています。ほとんどは無償で公開されていオープンソースのプロジェクトですからご安心ください。
それぞれ更に子メニューに分かれて、複数のOSがジャンルで表示されています。
メインメニューの一番上には、32bit版Raspberry Pi OSがありすぐに選べます。
Raspberry Pi OSの子メニューにはそれぞれ6つが選べます。

すべてRaspberry Pi OSですが、対応するモデルか、利用する種類を選んで書き込みます。
- Raspberry Pi OS Lite(32bit)
- Raspberry Pi OS Full(32bit)
- Raspberry Pi OS(64bit)
- Raspberry Pi OS Lite(64bit)
- Raspberry Pi OS(Legacy)
- Raspberry Pi OS Lite(Legacy)
Liteと記載されているのは、デスクトップ環境がないバージョンです。モニターを繋がない場合というだけではなく、ソフトウェアや各種ライブラリも入っていません。デスクトップ環境に必要なソフトウェアもありません。
その分、自分で必要なソフトウェアやライブリ、モジュールなどをインストールすることでシンプルに利用できます。サイズも小さくなっています。
32bitに続き、64bit版が公開されました。

また、Fullと記されているのは、初めから多くのソフトウェアとライブラリなどがインストールされているため、サイズも大きく書き込むにも時間はかかります。
よく分からない場合、手間が無いFull版をオススメします。
Legacyと書かれているのは、最新のBullseyeではなく1つ前のBusterです。今後、直前のOSバージョンがLegacyという扱いになります。
最新のOSバージョンでどうしても対応していないソフトウェアを使うには、Legacyを選ぶことで解決するでしょう。古いモデルで使う場合もLegacyを選択します。

Raspberry Pi 4や、Raspberry Pi Zero2 Wであれば、ハードのスペックとしても問題なく最新のOSで大丈夫です。
FullPageOS
たくさんあるOSの中から、先程の画像でいえば、5番目のOther specific-purpose OSにあるFullPageOSが新しくラインナップされているので試してみました。
FullPageOS
OctoPiからフォークして開発され、起動時にフルページブラウザを表示してくれるOSです。
いわゆるキオスクモードで起動できます。
FullPageOSは、キオスクモードといって、不特定多数が触る端末として使えます。
単純にChromiumブラウザを全画面で表示しながら使えるため、簡易的なデジタルサイネージとして活用もできそうです。
アイコンもChromiumの中にラズベリーが足された絵柄です。(トウモロコシみたいだけど)


Stable(安定版)で良いでしょう。Nightlyは開発版の意味です。

Raspberry Pi 4の4GBモデルから利用可能です。(古いモデルはサポートしていません)
起動する前に
電源を入れる前に、Wi-Fiの設定を済ませておきます。
FullPageOSは、いきなり全画面でWebブラウザが立ち上がっている状態のため、マウスで設定ができません。Wi-Fiに接続する設定を済ませ、あとは他のPCからSSH接続なりで作業します。
書き込んだmicroSDカードのルート直下にfullpageos-wpa-supplicant.txt
というファイルがあります。ここにWi-Fiの設定を記述して接続します。
## WPA/WPA2 secured
#network={
# ssid="put SSID here"
# psk="put password here"
#}
環境によっては他の要素も追記しないとなりません。
ウチの環境はkey_mgmt=WPA-PSK
なので追記しました。
## WPA/WPA2 secured
network={
ssid="put SSID here"
psk="put password here"
key_mgmt=WPA-PSK
}
ファイル名こと異なりますが、Raspberry Pi OSも同様の形式でWi-Fiを設定できます。これまでに経験した方なら同じだと気が付きます。
もう1箇所が必要です。
Wi-Fiの国指定をしないとWi-Fiが有効になりません。
# Uncomment the country your Pi is in to activate Wifi in RaspberryPi 3 B+ and above
# For full list see: https://en.wikipedia.org/wiki/ISO_3166-1_alpha-2
country=GB # United Kingdom
#country=CA # Canada
#country=DE # Germany
#country=FR # France
#country=US # United States
デフォルトではイギリスが有効になっています。
これをコメントアウトしてJPを追加しましょう。書き換えても良いです。GBをコメントアウトして、先程のnetworkの箇所に追記しても良いです。
# Uncomment the country your Pi is in to activate Wifi in RaspberryPi 3 B+ and above
# For full list see: https://en.wikipedia.org/wiki/ISO_3166-1_alpha-2
country=JP # Japan
#country=GB # United Kingdom
#country=CA # Canada
#country=DE # Germany
#country=FR # France
#country=US # United States

SSHで接続して設定ファイルを変更する
イメージを書き込んだ時点で、空のSSHファイルが存在しています。そのため、初回起動からSSH接続は有効になります。
ssh pi@fullpageos.local
パスワードはraspberry
です。パスワードの変更はpasswd
コマンドか、sudo raspi-config
から選んで変更しましょう。
表示させるWebページの設定
ついでに表示させたいURLも設定しておきましょう。
少し分かりにくいのですが、似たような名前のテキストファイルがあります。
- fullpageos.txt
- fullpagedashboard.txt
Wi-Fiの設定と同じmicroSDカード直下(/boot)にあるファイルです。
sudo nano /boot/fullpageos.txt
sudo nano /boot/fullpagedashboard.txt

分かりにくい
fullpageos.txtの中身は、デフォルトがhttp://localhost/fullpagedashboard
となっている。
fullpagedashboard.txtの中身は、デフォルトでhttp://localhost/welcome
となっている。
公式であるgithubのwikiから辿って説明をみても間違っているのか変更されたのか、1サイトは表示できたけど、複数URLのやり方がイマイチ分かりませんでした。
先ず、fullpageos.txtにURLを記述します。元の記述と置き換える。
https://raspida.com
fullpagedashborad.txtのデフォルトで書かれているhttp://localhost/welcomeを削除して、以下と置き換える。
http://localhost/fullpagedashboard
http:
またはhttps:
から記述するだけです。
有効にするためには一度再起動する必要があります。(sshでsudo reboot)
しかも、最初にWebサイトが出るまで結構時間が掛かります。カーソルだけの真っ黒い画面から30秒くらいかかるかな。
このようにテキストファイルだけで設定ができます。
- fullpageos.txt
- fullpagedashborad.txt
複数URLの設定がよく分かりませんでした。
デフォルトの記述が異なっていたので、説明のWikiが古い??
エラーで真っ黒
記事執筆時点で画面がブランクになるエラーがありました。マウスカーソルは出るけど、画面は真っ黒!?
Chromiumが立ち上がっていない感じがします。調べてもコレというのは分かりませんでした。
他にもlightdmもエラーみたいだけど、コレジャナイ。
GDBus.Error:org.freedesktop.DBus.Error.ServiceUnknown: The name org.freedesktop.Accounts was not provided by any .service files
多分、設定するファイルであるfullpageos.txtとfullpagedashboard.txtの記述が間違っている可能性が高いと思われます。
キーボードのファンクションキーには気をつけて
マウスは接続して通常のWebブラウジングが可能です。
ただ、キーボードは気をつけた方がいいです。ファンクションキーの割り当てがよく分かりません。多分、Chromiumのキーと同じだと思われます。
元に戻れないことになります。
このキーコンフィグがどこか分かりませんでした。
今後に期待
現在のStable版だと、URLで設定したWebページの表示はiFrame内で30秒ごとに決まっています。これがNightlyビルド版だと、フルで表示できてURLの表示スケジュールも可能とあります。
- 事前定義されたスケジュールに従って複数のURLを順番に表示します。
- iFramesなしのフルスクリーンで表示できる。
- 自動更新が可能になる。
更に、今後の開発予定として、Cloudアプリから制御させたり、デバイスをグルーピングして設定できるように開発しているとありました。
そうなると、複数台のRaspberry Pi を一気に変更できますし、違う場所にいても管理できて実用的です。
現在も似たような仕組みでScreenlyがあります。複数であったり遠隔での制御は無償ではなくなってしまいます。ちょっと試したいとき、今後はこのFullPageOSも候補に入れられます。(いずれは有償サポートになるかも知れませんが)
設定などはまだローテクな印象です。
それにSSH接続かVNC経由でしかシステム周りは操作できません。電源を落とすのもコマンドしかない。
その分、デフォルトのRaspberry Piとあまり変わりませんから、Raspberry Pi OSに慣れていれば簡単です。
バグが多いのが玉にキズ。
2月にもアップデートしたばかりということもあり、少し様子を見ながら試してください。
参考: