当サイトでもよく読まれている「Raspberry Pi で動く様々なOS一覧まとめ13種類!」にARM64版Windows10についてコメントをいただきました。その匿名の方もご自身のサイトでインストールした詳細を公開していました。
検索してみると、多く人が記事として公開しています。最初に知ってから時間が経ち、だいぶまともに動いている様子でした。コメントをいただいたこともあり、私もサクッと試してみました。
ARM版Windows10 をRaspberry Pi 4 メモリー8GBへインストールしたレビューです。
※常用するにはWindows10のライセンス番号とMicrosoftアカウントが必要になります。
ARM版Windows10って?
ここでいうARMというのは、CPUなどの構造(アーキテクチャ)のことです。皆さんがよく使うWindowsのパソコンは、x86やx64といった表記になります。現在はARM64のWindows10が開発されています。
Raspberry Pi はARMプロセッサです。
Raspberry Pi 4 BのCPUは、ARM Cortex-A72 1.5GHz。
ARMの64bitアーキテクチャはAArch64と表記されます。
これまではアーキテクチャが異なるため、そのままWindows10は動かないことはご理解いただけるでしょう。それなら同じアーキテクチャのRaspberry Pi でも動くというわけです。
ARM版のWindows10はタブレット向けに開発されて、Surface Pro Xにあるように、Microsoft SQ1とされているタイプがARMアーキテクチャのCPUです。
未だにMicrosoftから単品販売はありません。
動作する程度と思った方がいい
Windows10が通常と異なるARM版をとはいえ、Raspberry Pi 4のスペックをご存じならば、同じように使えないのだろうという想像は間違っていません。
それにmicroSDカードの読み込み速度はかなり遅いです。
USB接続のSSDドライブ起動とCPUのクロックアップ、メモリー3GB制限解除でなんとか利用可能なレベルです。
問題があります。
記事公開時点では、デバイスドライバがほとんど対応していません。
そもそも内蔵のWi-Fiは使えません。USBもSSDドライブ以外では周辺器機ドライバがほとんどありません。(マウスとキーボードなどはOK)
あっ、音も出ていない。

とりあえず動作を確認するには、CPUもクロックアップせず、microSDカードでも大丈夫です。但し、セットアップからかなり遅く、セットアップを完了するだけで相当の時間がかかります。(数十分)常用できる速度ではありません。

しかもクロックアップするため、熱暴走には気をつけましょう。
特に電圧を変更するため、USB電源コアはそれなりの物が望ましいです。私は以下を使いました。

クロックアップとSSDドライブ起動は必須
ARM版Windows10を(それなりに)軽快な速度で使うのは、CPUの動作クロック(周波数)のアップを施し、microSDカードではなく、USB接続のSSDドライブから起動させることが必要です。
更に、作成したイメージファイルは、メモリーが3GB上限になっていますので、これを解除し8GBモデルでフルに使えるようにします。
以下、設定は簡単に行えます。
何を設定しているのかよく分からないならば、オススメしません。
CPUのクロックアップは保証外です。自己責任で対応してください。
クロックアップの方法
設定ファイルに記述することで、CPUの動作クロックを上げて速度アップできます。Raspberry Pi 公式のTheMagPiマガジンのサイトでも設定の詳細と注意事項が載っています。
How to overclock Raspberry Pi 4
最大で電圧が6、CPU周波数は2147のため、それ以下で設定します。
Windows10 on Raspberry Pi でも、作成したmicroSDカードのbootパーティション内にあるconfig.txtに記述すると可能です。(パーティションはbootとwindowsと作られる)
over_voltage=6
arm_freq=2000
もしも起動時にブランク画面(真っ暗)になった場合は、電源を落としてSHIFTキーを長押ししながら起動させると一時的に設定を無視します。起動してから修正するか、別のマシンでこの記述の先頭に#を付けコメントアウトすればデフォルトに戻ります。
メモリー制限解除
ARM版のWindows10をRaspberry Pi 4で使う場合、現在はメモリーの制限は3GBがデフォルトです。この設定を変更するには、起動後にRaspberry Piのロゴ下に表示されているメニューからESCキーで設定できます。

コンバーターのダウンロード
ここからARM版のWindows10のダウンロードとインストール手順です。
今回はサイトUUP dumpからダウンロードします。※他にも同じようなサイトがあります。


試した時点では主に2つのバージョンがありました。
- version 2004 (19041.867)
- version 20H2 (19042.867)
今回は20H2をダウンロードしました。
言語を選びます。

エディションを選びます。
Windows10 HomeとProのどちらもチェックが入っていれば、インストール時に選べます。
ライセンスは無くてもインストールはできますが、使用するには所持しているライセンスエディションに合わせてください。

最終的にこの画面の青いボタン「Create download packages」でダウンロードされます。

特に難しいことはありませんでした。画像を参考にしてください。
実はこの時点ではWindows10のイメージファイルのダウンロードではなく、ダウンロードするためのコンバーターをダウンロードしたことになります。

ここにある実行ファイル「uup_download_windows.comd」でダウンロードをしながらイメージファイルの作成が行われます。
私の環境では1時間くらいかかりました。環境によりますが気長に待ちましょう。


これで〜.ISOのファイルが出来上がります。(ファイル名はバージョンによる)
イメージファイルの書き込み
できあがったイメージファイル「〜.ISO」を書き込むのに、Windows用のプログラムを使います。Windows on Raspberry imagerでmicroSDカードやUSBメモリーやUSB接続のSSDドライブへ書き込みます。

ダウンロードしたファイルを解凍すると、「WoR」( バージョン2.01)があります。

実行途中、警告が出た場合はすべてはいで許可してください。

ウィザード形式になっています。次へで6ステップです。先ずは言語を日本語を確認。

書き込むストレージドライブとRaspberry Piの種類を選びます。
※ストレージドライブの選択を間違わないようにしてください。

先程時間をかけてダウンロードしたイメージファイルを選びます。エディションはHomeかProを選びます。
ドライバーの選択とファームウェアの選択は、どちらも最新の〜からダウンロードを選択します。


再度の設定は特に何もせずにそのまま進めます。

インストールの概要に選択した内容が記載されています。間違いがなければ赤いボタン「インストール」で選んだストレージドライブに書き込みます。

書き込むのも時間がかかります。計測していませんが5分〜10分くらいでしょうか。
書き込みが終われば、Raspberry Piに挿して起動させるだけです。


最初のセットアップを終わらせるのはかなり時間がかかります。止まってしまったのではないか?と疑うレベルです。
まだ実用的ではない
Raspberry Pi用ISOイメージの作成は、慣れていないと少し分かりづらいと思いますし、オーバークロックも施さないとならない点は万人向けではありません。
ARM版とはいえWindows10が動くのはなんとも変な感じがします。microSDカード起動ではお世辞にも使えるとは言えません。仮にSSDドライブ起動だとしても快適とは言えません。
何よりも各種デバイスドライバがまだ提供されていないので、デスクトップ環境に軽いアプリケーションしか使えません。これならUbuntuMATEの方がマシです。
今回のように、公式ではないツールを使用してARM版Windows10のISOイメージ作成ですが、バージョンアップは頻繁に行われています。今後に期待しましょう。
ほぼインストールマニア向け?な印象でした。
ツールソフト登場
この記事の手順を、ほぼ自動的に行ってくれるツールソフトを公開する人が現れました!
これならただ待つだけに近い。手間なしでした。どうしてもArm版Windows10、11をインストールしたいなら、このツールソフトをお試しください。

この記事のコメント(承認後に公開)
コメント一覧 (2件)
海外のサイトではRaspberry pi 4B WORインストール後にカスタムファームウエアを入れてMicro SDカードの読み取り速度を20MB/sec=>27.5MBにspeed upさせる方法や、カスタムでオーディオのdrive開発など活発に活動しているようです。
https://www.youtube.com/watch?v=JbFKJD07pRo&t=220s
4BのSDカード読み取り理論値は40MB/Secあるので、がんばればもう少し高速化されるかもしれません。
またUSB系の枯れたデバイスは、すでにかなりのドライバーが用意されているのでWindows Update行うと結構動きます。
ただ、3GBリミッターを外すとUSBブートで安定しないのが難点です。
Arm版のアプリが少ないのが難点ですが、一度起動してしまえばEdigeやOfficeは結構快適に動きます。
余っているWindows PCの7や8.1のライセンスでも認証通りますので、お遊び程度には使えます。
情報をありがとうございます。
やはりデバイスドライバが課題ですね。メモリーも3GBに制限しているのは不安定だからでしょう。
今後に期待します。